ガネーシャ通信(9)  スローフードのすすめ

 昨年8月の帰国の際、国際雑穀食シンポジウム2000に参加して、「スローフード」という耳慣れない言葉を聞きました。戦後の高度成長で社会の歪みが生まれた原因の一つとして、急いで食べるファストフード、外食に走った食生活が指摘されています。食生活はまさに文化の象徴であり、ファストフードに対抗するスローフードこそが、これからの社会に望ましいとう考え方なのです。

 確かに、食事は、地場の食材を大事にして、ゆっくり時間をかけ、会話を楽しみながら行いたいものです。日本での青少年犯罪の多発を考える時、犯罪を犯した子供たちが向かった食卓はどのようなものだったでしょうか。食卓の見直しは家族のあり方を考えるきっかけになりますし、日本の農業のあり方にも変更を迫ることになるでしょう。さらに問題意識は、世界の食糧資源、環境問題にまで広がっていくのです。

 先日、インドのテレビで英国の国民が遺伝子組替え食品に反対するデモを行っているニュースを見ました。農薬、化学肥料の規制の厳しさではヨーロッパのドイツ、オランダに次ぐ英国にあっては当然と言えば当然でしょう。これに対し、アメリカではそれ程反対が大きくなく、日本もアメリカに追随するパターンを取ってきました。

 アメリカとともに有機食品規程では完全に遅れていた日本でも、やっと4月1日からJAS(日本食品規格)の有機条例が施行されます。違反食品には罰則が適用されますので、これまでスーパーなどで販売されていたニセ有機食品は店頭から締め出されます。実際に「有機」と銘打てる食品は従来の1割前後になると言われています。

 マカイバリ茶園では有機の大切さを他の茶園に先駈け約10年前から認識し、自然との調和をベースに紅茶を栽培続けてきました。そして、海外紅茶として第1号のJAS有機証明取得を目指して申請を行っています。新たな展開を機会に、日本社会全体が有機食品の重要性を再認識し、スローフードを生活に取り入れるよう切望したいものです。

(By 石井  吉浩)

(14)「水力発電と灌漑にかける」
(13)「郷に入りては」
(12)「正念場のIT王国」

(11)「クリーン車騒動のあおり」
(10)JAS有機認証を得て
(9) スローフードのすすめ
(8) マハ・クンブ・メラの聖水
(7) 新世紀を健康の世紀に
(6) 養牛院への誘い
(5) 茶園の住民たち
(4) ヤマンバはいないけど
(3) 有機証明と健康
(2) 美人大国インド
(1) マカイバリ紅茶との出会い