■ マカイバリ・ジャパンのキー・スタッフはインド生活約14年の石井吉浩&洋子です。居住している首都ニューデリーの南地域グルモハールパークと、ダージリンのマカイバリ茶園を往復する二人はマカイバリ紅茶に惚れ込み、紅茶を通じての日本・インド関係の発展を願っています。石井吉浩が、まだまだ日本人には不思議の国であるインドを、いろんな角度から紹介します。題して「インド・ガネーシャ通信」です。
石井吉浩 岡山県生まれ。東京大学経済学部卒。「丸紅」に入社し、2度にわたるニューデリー支店勤務、ドーハ(カタール)支店勤務を含め31年間の商社マン生活にピリオドを打った。悠久の大地にほれこみインド生活が続く。 石井洋子 東京都生まれ。東京学芸大学社会科卒。小学校教員を合計16年間務め、その経験を活かしインドでは日本語教育も行った。
■ガネーシャ通信(15) 「産地直下型のたくましさ」 日本では産地直送の野菜、果物が重宝されていますが、インドでは、”産地直下”の新鮮さが受けています。 たとえばちょうど今が最盛期の果実、ジャムン(日本名ムラサキフトモモ)。オリーブを少し大きくしたぐらいの紫色の実は、少々渋くて、甘酸っぱい味がします。決しておいしいとはいえませんが、安いうえに、疲労回復、血糖値を下げるのに役立つといわれ、人気があります。 デリー市内のインド門近くにジャムンの立派な並木通りがいくつかあり、この木の下で女性、子供、老人が紫色に熟したジャムンを籠に入れ、約10メートル間隔で1日中売っています。デリーの風物詩の1つといえるでしょう。早朝に家族全員で現地にやってきて、主人が長い竿で実を落とし、妻や子供がシーツぐらいの布を四方に広げて受けとめます。もちろん仕入れコスト、輸送ともかかりません。 50グラム買ってみたところ、何と50個もあり、値段はわずか15ルピー(約40円)。売っていたお年よりは、籠に入っていた6キロのジャムンが、その日のうちに売り切れると豪語していました。仮に全部売りさばいても500円前後です。家族7、8人が生活出来るのか疑問ですが、当地での物価水準ではそこそこの収入です。彼らは毎年、縄張りを決めてまで商売をしているのです。 もうひとつ、樹木の名前は分からないのですが、モンスーン前の酷暑の頃、種を含んだ白い綿状の物が落下傘のようにふわりふわりと舞い降りてきます。デリーゴルフ場でプレーをしている最中にもお目にかかります。日本大使館とネルー公園の間の通りでは、まるで雪のように積もるため、これまた家族総出でかき集めるのです。集めた綿を布に詰めれば、枕があっという間に出来上がり、即座に売られます。これも産地直下型商売で、布代を除けば、原価はほとんどゼロです。枕1個の値段は50円前後。1日5個売れても大した収入にはならないのですが、家計の足しにはなるでしょう。 総人口10億人の国ゆえ、満足出来る収入の職にあり付くのは並たいていでありません。生きて行くために考えられる全ての収入の可能性を追求せざるを得ないわけです。さもなければ生きて行けないわけですから。 かって商社に勤めていた時、「いったい何人が一番商売うまいか」と冗談話で言っていました。その答えは、「1にレバシリ(レバノン人、シリア人=フェニキア商人の末裔、2にユダヤ人、3に印僑(インド商人)、4に華僑。5、6が無くて、7が日本商社」 産地直下型ビジネスの繁盛ぶりを見るにつけ、インド人の商才の背後にあるたくましさを感じずにはいられないのです。 (By 石井 吉浩)
■ インド・ガネーシャ通信バックナンバー
(14)「水力発電と灌漑にかける」 (13)「郷に入りては」 (12)「正念場のIT王国」 (11)「クリーン車騒動のあおり」 (10)JAS有機認証を得て (9) スローフードのすすめ (8) マハ・クンブ・メラの聖水 (7) 新世紀を健康の世紀に (6) 養牛院への誘い (5) 茶園の住民たち (4) ヤマンバはいないけど (3) 有機証明と健康 (2) 美人大国インド (1) マカイバリ紅茶との出会い