■ガネーシャ通信(13)
「郷に入りては」
本通信第4号でお伝えしたように、インドでは1991年以降の経済自由化に伴い、道行く若者の服装が様変わりしました。都市部では食生活でも大きな変化が見受けられます。
かつて反米感情から追放されたことのあるコカ・コーラは、ペプシ・コーラとともに再上陸し、あっと言う間に国産のカンパ・コーラを片隅に追いやりました。ファストフードのチェーン店も続々と進出。ジーンズの学生たちが、サモサやマサラ・ドーサの替わりに、ピザやハンバーガーを頬張っています。とはいえ、何もかもそのまま受け入れているわけではありません。ご承知のようにヒンドゥー教徒は牛肉、イスラム教徒は豚肉がご法度の上、かなりの数の人々がベジタリアン(菜食主義者)の国です。画一化が売り物のファストフードもインド風にアレンジし直す必要があります。
かのマクドナルドもインドですでに20数軒開店していますが、郷に入りては何とやらで、世界初(?)のベジタブル・バーガーを開発しています。早速、物は試しとべジタブル・バーガー・セットを注文してみました。バンズの間に挟まった具といえば、狐色にカリッと揚がった衣の中に、ターメリックで黄色く染まったマッシュポテト。サイコロ状の人参とグリーンピースがアクセントを与えています。ケチャップをまぶした具をバンズに戻してガブリとやると……。うーん、限りなくカレーコロッケパンに近い味。これでセット料金84ルピー(約220円)はお値打ちでしょうか?
マクドナルドは今後2年で店舗数を倍増計画中と聞きますが、思わぬ横槍が入ってきました。というのは、米国でこのほど、フライドポテトに牛の成分が使われていたとして、インド系のヒンズー教徒がマクドナルドに対して訴訟を起こしたというニュースが飛び込んできたからです。
はるかワシントンで起きたこの事件は、インドで波紋を呼びました。「マクドナルドはフライドポテトに牛脂を使っている」という噂が広まり、ムンバイやニューデリーの店が襲撃され、一騒動になっているのです。マクドナルド側は100%植物油しか使っていないと反論していますが、このまま沈静化するか否か。まさに、神のみぞ知るです。
(By 石井 吉浩)
■ インド・ガネーシャ通信バックナンバー
(12)「正念場のIT王国」
(11)「クリーン車騒動のあおり」
(10)JAS有機認証を得て
(9) スローフードのすすめ
(8) マハ・クンブ・メラの聖水
(7) 新世紀を健康の世紀に
(6) 養牛院への誘い
(5) 茶園の住民たち
(4) ヤマンバはいないけど
(3) 有機証明と健康
(2) 美人大国インド
(1) マカイバリ紅茶との出会い