■ガネーシャ通信(11)
「クリーン車騒動のあおり」
増加する一方の車から出される排ガスのため、ニューデリーはメキシコ市、アンカラに次ぎ、世界で3番目に大気汚染が深刻な都市と言われています。その影響で子供、老人の喘息、気管支炎が年々増えています。
危機感を抱いたデリー首都圏政府は1997年に排ガス規制条例を制定しました。バス、タクシーのディーゼル使用を禁じ、液化天然ガス(CNG
)への転換を図ろうというものです。ところが、「そんな条例は市民の利益に反する」という異議が出され、裁判沙汰となったのです。98年6月に最高裁が示した判断は、条例実施を2001年4月1日からとし、それまでを猶予期間としました。
さて、いよいよ条例実施時期を迎え、混乱は避けられませんでした。地下鉄のない当地での庶民の脚はバスかオートリキシャ(三輪車)。
オートリキシャも従来のガソリンからCNGへの切り替えを命じられていました。一部の業者は素直にCNG使用に切り替えましたが、大半のバス、オートリキシャは旧態然依然で、4月1日から走れなくなったわけです。庶民は脚を奪われ、スクールバスも走れないため、学校は休校となる始末。わが家も、バス通勤の料理人が欠勤するという被害にあっています。
CNGのスタンドにはオートリキシャが長蛇の列をなし、通勤者はバスに乗るのに3時間も待つとか。怒った通勤者がバスターミナルで放火するなど、暴動騒ぎも起きています。新聞といえば「ジャガイモ、ニンジンがなくても生活できるが、バスがなくて生活ができるか?」と書き立てます。
確かに公害対策上の措置とはいえ、燃料をディーゼルからCNGに一挙に切り替えるのは、経済的にも物理的にも難しいのが現実。たまたま、車2台を使ってバス業を営んでいる大家に尋ねてみると、「今はバスを走らせていないが、困ってはいない。そのうち何らかの解決策が出るだろう」と泰然たる答え。インドのことですから、いずれ何か解決策を見出すことでしょう。道路の混雑が消え、クリーンになった首都の空気を当分は楽しむことにしましょう。
(By 石井 吉浩)
(14)「水力発電と灌漑にかける」
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(11)「クリーン車騒動のあおり」
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(9) スローフードのすすめ
(8) マハ・クンブ・メラの聖水
(7) 新世紀を健康の世紀に
(6) 養牛院への誘い
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(4) ヤマンバはいないけど
(3) 有機証明と健康
(2) 美人大国インド
(1) マカイバリ紅茶との出会い