■ガネーシャ 通信(12)
「正念場のIT王国」
インドといえば、「ソフトウエア開発」というイメージが定着したようです。 実際、インドに住んでいると、多くの人たちがコンピューター・エンジニアを名乗って、あちこちで活動しているのを目にします。
もちろん、英語がペラペラで優秀なエリート・エンジニアもいるにはいますが、そうでないエンジニアも多いのです。
「あっ、コンピュータが動かない」と、コンピュータ会社に電話 した場合、派遣されてくるエンジニアはだいたい英語が不得意。それでも、仕事ぶりは速く、彼らは理論より実践に長けているようです。
「英語ができる=高等教育を受けている」とい う一般的図式はそこでは成り立ちません。
コンピューターのトラブルが複雑で解決できないとなると、送られてくるエンジニアは次第にグレードアップし、バイリンガルのエンジニアのお出ましということになるのです。
ソフトウエア・エンジニアは、若くても技術と経験があれば、とてつもない高給取りになれます。ソフト会社は、新しくて冷房も完備。大手だと、社内にモダンなカフェテリア、さらにはジム、プールさえあります。どうして、ジムやプールまでと会社側に聞くと、「社員に少しでも長く会社にいてもらって、仕事をバリバリやってもらうため」という答えが返ってきました。
この業界での転職は、常識中の常識。インド国内に限らず、海外への転職さえ珍しくありません。「エンジニアは引っ張りだこで、ちょっと気に入らないことを頼むと、あっさりやめてしまう」と、ある企業の役員がため息をついていました。IT企業は優秀な人材確保のため躍起なのです。
しかし、頼りにしてきた米国の景気が後退し、インドのIT産業も曲がり角に直面しています。また、これまで業界の旗手と言われてきたデワング・メータ氏の急逝というニュースもありました。「インドのソフトウエア産業は必ず世界に躍り出る」というデワング氏の10年前の予言通り、バンガロールを中心にインドのIT産業は、驚異的な発展を遂げてきました。今をときめくITエンジニアの将来はどうなっていくのでしょうか。
これからが正念場です。 (By 石井 吉浩)
(14)「水力発電と灌漑にかける」
(13)「郷に入りては」
(12)「正念場のIT王国」
(11)「クリーン車騒動のあおり」
(10)JAS有機認証を得て
(9) スローフードのすすめ
(8) マハ・クンブ・メラの聖水
(7) 新世紀を健康の世紀に
(6) 養牛院への誘い
(5) 茶園の住民たち
(4) ヤマンバはいないけど
(3) 有機証明と健康
(2) 美人大国インド
(1) マカイバリ紅茶との出会い