■ インド・ガネーシャ通信(4) ヤマンバはいないけど
日本に帰国するたびに「ガングロ」だ「ヤマンバ」と、”新種”の若者の出現に驚かされます。しかし、周囲を見渡すと、インドの若者の変化にも激しいものがあります。
私の住む首都デリーでは2、3年前まで、若い女性といえば、上がワンピースみたいで、下がズボンという伝統的なサルワール・カミーズの服装が普通でした。ジーンズの女性は目を引いていたのですが、今は様子が一変しています。タイトなジーンズをはこうが、スカートをはこうが、それほど目立たなくなり、タンクトップも登場しているぐらいなのですから。
短期間で、こうも服装文化が変わった背景には、衛星テレビの影響があるでしょう。インド国営放送しかなかった時代は去り、90チャンネルもあるケーブルテレビの衛星チャンネルをひねれば、露出度の多い世界のファッションショーから、かつては映画館へ行かないと見れなかったアメリカ映画まで、自宅で見られるようになったのです。
英語力があるだけに、日本のように字幕スーパーや吹き替えに頼らずに楽しめます。もちろん、インド10億の民が、みんな英語ができて、ケーブルテレビ代を払って衛星放送を見られるわけではないのですが、タンクトップやミニスカートの女性は、そんな環境の中で生活しています。
また、ほんの少し前までは太るのを気にする日本の女性などとは対照的に、インド人の間には、やせていると「女を感じない」という貴重な価値観がありました。しかし、それも欧米風の美的価値観の波に洗われ、砕かれんとしています。ダイエットセンターの広告が、新聞紙面をにぎわせ、あのおいしいサモサさえ太ると言って食べない女性がいるらしい。洋服は体形が勝負だから女性たちも大変な努力をし始めたのです。
タイトジーンズのインド美人が、これまたファッショナブルで脚の長いボーイフレンドと手をつないで街を歩く。ただし、その横を牛がのろりのろりと歩いているところが、やはりインドなのです。
(By 石井 吉浩)
|