■ガネーシャ通信(14)    
          「水力発電と灌漑にかける」   

  5月中旬にマカイバリ茶園に飛びました。5月5日からプリモンスーン(モンスーン前の降雨)が始まっていたので、3月末に行った時に比べ、茶葉は完全な緑色で、清々しいしい印象でした。セカンドフラッシュの茶葉はすくすく伸び、マカイバリ茶園特有のグリーンフライも多数飛んでいました。

 実は、今年も1999年に次ぐ大旱魃といわれ、ファーストフラッシュは例年に比べ30%の生産減でした。茶園主のラジャはある程度、旱魃を見越し、1月に例年より数倍も多くの枝刈りを行っていました。ファーストフラッシュの生産量を犠牲にしても、セカンドフラッシュでそれを補うに十分な生産量を回復出来るとの考えたからです。  旱魃時に出来るだけ茶葉からの水分の蒸発を抑え、その分地下の根でエネルギーを蓄えて、セカンドフラッシュで一気に爆発させるという彼なりの発想です。この試みは初めてだそうですが、ラジャは、シュタイナーの農業理論に基づいているのでセカンドフラッシュの生産量を見ていてくれと自信満々でした。

今回、彼と打ち合わせたのは「水力発電、潅漑プロジェクト」です。NHKがマカイバリ茶園を紹介した番組でも触れていましたが、ダージリン地区全体の紅茶生産量は年々減少しています。1991年の16,244トンから激減し、2001年は9,500トンと推計されています。
理由は、@化学肥 料、農薬使用による土地枯渇A労使トラブルによる茶園主の現地不在B自然破壊のための土砂崩れ――などが指摘されています。 しかし、ここ3年だけを見ると、旱魃の影響も無視できません。
 
水力発電による潅漑プロジェクトを実現すれば、マカイバリ茶園だけで40%の増産が可能になります。また、茶園内の電力不足解消や、従業員の飲み水供給に役立つのです。現在は、渇水時だと谷の水を汲むため、子供や老人が往復10キロの山道を降り登りしなければならないのです。
 
ラジャはこのプロジェクトを30年も夢として暖めてきました。その熱意にほだされた私は、マカイバリのためだけというのでなく、15年間お世話になったインドのためにもと、一肌脱ぐ決意をしました。資金をはじめ障害は多々あります。しかし、"Where there is a will, there is a way"(意志あるところ道あり)です。幸い、マカイバリ茶園周辺には、原生林から湧く汚染されていない清水もあります。  ニューデリーに帰って間もなく、茶園からセカンドフラッシュが届きました。それを飲んで、「素晴らしい香りで、99年に匹敵する快心作でないか」とラジャに電話を入れました。すると、ラジャから「テースティングの教えがいがあったか」と冷やかされました。       
  (By 石井 吉浩)


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