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マカイバリ茶園主S.K.バナジー氏
現在のマカイバリ茶園を指揮しているのは、マカイバリ茶園4代目茶園主であるS.K.バナジー氏(1947〜)です。マハラジャ(藩王)の息子なので「ラジャ」の名で呼び親しまれています。
バナジー氏はマカイバリ茶園で生まれ育ち、英国の大学を卒業後、エンジニアになることを志していました。しかし休暇で茶園に帰省中、森の中で落馬し、茶園の人々に助けてもらいました。茶園の人々の心の温かさに、自らの原点が茶園にあることに気がついた彼は、家業の茶園を引き継ぐことを決意したのです。
自然との調和をめざして
彼がマカイバリ茶園に戻ってきた1970年代、ダージリンの茶畑は農薬や化学肥料の使い過ぎで痩せていました。そのことに非常に衝撃を受けた彼は、独学で農業を学びました。ルドルフ・シュタイナー(1861〜1925)のバイオダイナミック農法、福岡正信氏(1913〜)の自然農法、そしてマハトマ・ガンジー(1869〜1948)の哲学は、バナジー氏のその後の茶園経営に強く影響を与えています。
バナジー氏の理想は、自然との調和の中で茶栽培を行うことです。農作物を育む土地はセルフ・サステイナブル、つまり自立維持可能でなければならないと考えます。そのため農薬、殺虫剤、除草剤を使わず、牛糞、油かす、枯葉などの有機肥料や、自然殺虫剤を用いるのです。
「健全なる土壌が健全なる人類を育む」というのがバナジー氏の考えです。具体的には茶園と、それを囲む森林の割合をほぼ1対2とし、茶園が自然と調和するように図ります。森林に住む動物や植物とバランスを大切にするのです。茶木の根元にはクローバーを中心とした雑草を成長させ、窒素肥料を吸収させるようにします。また、ガテマラグラスや枯れ木、そして枯れ草を茶木の根元に敷き詰めるマルチングを行なうことにより、雨季には土砂崩れを防ぎ、乾季には土からの水分の蒸発を防ぎます。
異色の経営者 〜ダージリンで唯一、茶園に住むオーナー〜
バナジー氏は、バイオダイナミック農法を他の茶園に先駆けて取り入れただけでなく、ダージリンでは異色の経営者でもあります。ダージリン地方には約80ほどの茶園がありますが、茶園のオーナー自らが茶園に住み、茶栽培の指導に当たっているのは、マカイバリ茶園主バナジー氏だけなのです。バナジー氏は、大自然との調和によるバイオダイナミック農法を、そして茶園で働く人たちの生活を守るため、ダージリンの茶園では唯一、オーナー自らが茶園で生活をし、茶園で働く人たちのコミュニティーと共に、マカイバリ茶園を守っています。
バナジー氏は毎日7時間かけて、茶畑を歩きます。土や茶木の様子を観察するだけでなく、茶畑で働いている人たちとコミュニケーションをはかるためでもあります。バナジー氏は茶園で働く約680人の名前を全て覚えています。そのよのうや気さくな彼の人柄は、コミュニティーの人々の身の上相談にのるほどです。朝から昼食まで茶畑を歩き、午後から身の上相談にのり、夕方に一日の成果報告のミーティングを開く、それが彼の日課なのです。
紅茶に関わる人、動植物、自然、それらすべてが関連し、調和を保ち、良い状態であrときに、すばらしい紅茶育つ、とバナジー氏は考えています。
バナジー氏の功績
そうしたバナジー氏の情熱的な茶栽培の様子が、NHK総合テレビ「新アジア発見」(1999年5月16日)で取り上げられました。「よみがえれ 紅茶のふるさと」と題された30分の番組は、化学肥料によって土がやせてきたダージリンで、最初に有機農法に切り替え、伝統の茶園に新しい方法を定着させた人物としてバナジー氏を生き生きと描いています。この番組で日本の紅茶ファンの間にマカイバリ紅茶への関心が一気に高まりました。
バナジー氏は2002年11月21日に「インド総合経済委員会」の推挙で素晴らしい個人的業績と国家に対する顕著な奉仕に与えられる『ラシュトリヤ・ラタン勲章(国の宝石)』を授与されました。また、2003年6月にバナジー氏は来日し、手揉み玉露名人・山下壽一氏(京都・京田辺市)に玉露指導を受けました。また、2004年には山下氏自らがマカイバリ茶園を訪れて下さり、マカイバリ茶園の人々に玉露指導を行って下さいました。そして2005年6月には、バナジー氏が来日した際、再び京都・京田辺市の山下氏のもとを訪れ、玉露指導を受けました。
(バナジー氏とともにマカイバリジャパンが行う「ダージリン懸け橋プロジェクト」のページ>>>
福岡正信先生、山下壽一玉露名人のほか、埼玉医科大学の米谷新教授との白内障プロジェクトやエコツアーなどを行っています。
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NHK総合テレビ「新アジア発見」(1999年5月16日)
番組で語ったラジャさんの言葉は印象的でした。
「この土を見てください。豊かな土の中にいる無数の微生物をなぜ化学肥料を使って殺すようなことをするのか私にはまったく理解できません」
「この茶園のようなやり方が、今後はいっそう求められるようになるでしょう。一人一人の人間が自然の中のあらゆる命と調和するのです。ここに生きるすべての存在が一緒に成長していくのです」。
マカイバリ茶園を視察に訪れた米国の喫茶店チェーン社長スティーブン・スミスさんもこう評価しました。
「森とお茶と生き物の共存。この土を見るだけでも驚きです。半年も雨が降っていないのに、土に水分があって、生き物もいる。これは簡単にはできないことです。他の茶園も見てきましたが、土はひびわれ、茶の葉は焼けたようになっていました。明らかにこの茶園でのあらゆる生き物を尊重する栽培法が正しいことの証明だと思います」。
●このほか英字紙Japan Timesが1999年3月14日付け紙面で、バナジー氏のロング・インタビューを掲載。ドイツやフランスでもテレビや本でマカイバリ茶園の素晴らしさが紹介されています。自然環境に関心の強い非政府組織(NGOO)もたびたび自然との共生を図るマカイバリ茶園の視察に訪れています。インドの環境オンライン誌「エコポスト」もマカイバリ茶園を詳しく紹介しました。
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