インドで紅茶ビジネスと
国際協力活動に携わる
石井博子さん 29
紅茶の名産地、インド西ベンガル州ダージリン。この地方で独自の有機栽培で知られるマカイバリ茶園のアジア・日本総代理店「マカイバリジャパン」(本社・東京)のニューデリー駐在員を務める。
農薬は一切使わない。670ヘクタールの敷地の3分の2は「トラも住んでいる」という原生林のまま残してある。こうした徹底した自然志向の農法で育てた茶葉は、日本でもホテルや高級スーパー、インターネット販売で人気が広がっているという。6月には同茶園からセカンドフラッシュ(夏摘み茶)が入荷した。「夏摘みは味と香りのバランスが特徴。春、夏、秋と摘まれる季節ごとにまるで違う味わいを楽しんでほしい」と紅茶の魅力を語る。
会社は、商社員としてインドに2回、カタールにも1度駐在した父が、退職後にマカイバリ茶園のオーナーと知り合って興した。自然食品に関心があった元小学校教諭の母、研究機関に経営コンサルタントとして勤務していた姉も経営に加わった。
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■ ブログは連日公開 ■ |
自身は大学院修了後、民間活動団体(NGO)に勤めたい気持ちがあったが、家族の会社を手伝う道を選んだ。しかし、紅茶ビジネスと並んで、日本とインドの交流を深める「懸け橋プロジェクト」も会社の重要な事業のひとつとなり、ダージリン地方での白内障患者治療や、北部ウタランチャル州の山岳部に発電用ソーラーパネルを貸与するといった活動に深く関与することになった。
「家族のため、茶園のため、さらには現地の人々のためにと考えて働いていたら、元々やりたかったNGO的事業にもかかわれるようになった。とてもラッキーでした」
埼玉医科大眼科の米谷新教授がダージリンに出向いて無料で治療を施す「白内障キャンプ」は今年11月で4回目を迎える。マカイバリ紅茶を愛好する教授が治療設備に事欠く現地の事情を知り、「大好きな茶の産地に恩返しをしよう」と最新の医療器具を現地の国立病院に届ける運動を始め、賛同する企業13社がスポンサーについて実現した。インド人眼科医に日本で研修を受けさせる企画も実現している。
9月には、ウタランチャル州の農村で男性が季節労働に出る間、残された女性たちが収入を得られるよう、機織りのマフラーなどを日本でインターネットや店舗を通じて販売する事業も始める。自らも機織りをすることがあり、「1000本もの縦糸を並べる、本当に忍耐の要する仕事」と実感しているだけに、人気を広めたい気持ちは強い。
「インドの今を届ける」と銘打ったブログ「マカイバリ紅茶日記」もほぼ連日書き続けている。話題は紅茶に限らず、インドでは犬は好かれるのになぜか猫は不人気というペット事情、現地では高級レストランの部類に入るという「マクドナルド」のにぎわいなど、ニューデリーの街の光景を写真入りで次々紹介する。話題を仕込むため。デジカメはいつも手放せない。
「日本ではよく、はやりすたり、と言われますが、インドでは、はやりはあってもすたりがない。若い女性がジーンズもサリーもさりげなく着こなすように、新しいものを取り入れながらも古いもの残して、どんどん選択肢を増やしている」
子供時代から慣れ親しんできたこの国から、ますます目が離せなくなっているようだ。(ニューデリー 永田和男、写真も)
略歴
1977年東京生まれ。幼児期をインドで過ごし、中高生時代は英国で寄宿舎学校に通いながら、休暇は父の赴任地だったインドやカタールに滞在。2003年国際基督教大学大学院教育学研究科修了。ブログは、同社ホームページhttp://www.makaibari.co.jp/で。
■ ニューデリースタッフがインドの「今」をお届けする ■
紅茶専門店スタッフのブログ「マカイバリ紅茶日記」
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